ハロウィンなんだね。ティム・バートン映画のモチーフとして以外、ぴんと来ないが。
坂道を上がっていくと、林を突っ切って畑地へと通じる、感じのいい未舗装路がある。自転車が走れないほど凸凹で、雨が降れば半分が泥濘み、日が暮れると真の闇に包まれてしまうので、自動車が通らないどころか人も歩きたがらない。
肢を手術したての我が犬は、あんなに外に出たがっていた癖に、奇妙なリズムで一分も歩いたら、もう尾を下げている。手術痕周囲の熱は引いて、今は痛いというよりむず痒そうに見える。股関節も痛いといった風ではない。しかし力が入りにくいようだ。
進みたくも帰りたくもなく、自分でも困っている。頸に傷舐め防止のカラーを付けられて以来、家の中では排便しない。トイレの上に立ってみても、どこを狙えばいいのか見当をつけられないらしい。
せめて排便まではと、歩きたがらないのを無理に未舗装路まで引っ張り上げる。嫌がっても歩かせてください、と医師からも云われている。カラーのせいで音が聞えづらいのが不安らしく、頻りに後ろを振り返っている。
上がってしまえば、林の雑多な植物に気をとられて、多少は歩みがしっかりする。排便も気が楽らしい。
歩き方や尾の下がり具合から判断し、適当なところで折り返して帰る。犬は、歩けない癖に物足りない。仕方がないので庭に放しておいて、草毟りを見学させる。カラーのお蔭で本来は脱走できる隙間から出られない。その気力も無かろうが。
この季節、犬の身には大量の草の種が付着する。浴室で洗うと、排水溝にびっしりと溜まる。
より仔犬の頃から、後ろ左肢を洗わせたがらなかったのを思い出す。その肢が痛いのだと思っていた。逆だった。そちらでばかり体重を支えているから、上げるに上げられなかったのだ。そういう事例が幾つか見えてきた。後日、まとめて書く。
ひとしきり草毟りに夢中になったあと、自分の行動や所作が、親とそっくりなのに気づく。
そこかしこにアップルミントが勝手に生えている。犬に食わせると、不味いと云った。
じき山茶花が満開になる。植えっ放しの薔薇に蟷螂が卵を産んで、そのまま見張るように棲み着いている。


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