『11』やらなにやらで印税が入り、僕にしてはたいそう買物をしている。といっても生活必需品のみ。
白山眼鏡店に古い眼鏡、素通しと色付きの二本を持っていき、今の視力に合ったレンズに交換してもらった。これが最大の贅沢。僕の視力だと、レンズだけでも簡単に四万五万を超えてしまう。持っていった眼鏡はどちらも十年以上前の物だが、さいわいどちらも使えた。
ハズキルーペという眼鏡型の拡大鏡を買う。眼鏡の上からも掛けられ、ものが1.6倍程度に見える。いざ使ってみて、このところの本離れ雑誌離れは視力低下の所為であったと気付く。とりわけ読みにくかったのはカタログや商品ラベル。母にも買ってやろうと思い立ち、やがて、もう死んでいることを思い出す。こういう現象や感情にも慣れてきた。
さらに屋内作業用の眼鏡。量販店をひょいと覗くと変わった素材の眼鏡フレームが陳列してあり、店員が近寄ってきてぐにゃぐにゃと曲げて見せる。これは凄い。僕のように「自分で開けたドアで顔面を強打する」人間には打って付け。「テレビCMで人気です」と云われるもテレビは見ないのでよく分からない。ともかく凄い。そして安い。
上述の白山で頼んだレンズは、辛うじて映画を観られるようにまで矯正したもの。それでパソコンを見たり文字を書いたりはできない。度が強すぎるのだ。屋内で使っているのは、ずいぶん昔の壊れてしまった眼鏡の、レンズだけ周囲を削って別なフレームに填めた代物。殆どの女性が綺麗に見える魔法の眼鏡。
後日同じ量販店を訪れ、凡てぐにゃぐにゃではないものの、蔓だけはそうなった眼鏡を買う。単純に、そちらのほうが顔に似合ったから。
検眼の結果、魔法の眼鏡と同じ度数で良かろうということになった。それでも僕の視力では追加料金一万円也。
贔屓の古着屋を巡る。
一店目で'70年代の物と思しいコーディロイの、リーヴァイスのジージャンを見つける。くたくたになっていて逆に着心地がいい。袖は少し短かったが購入。
次の店でやはり'70年のリーヴァイスの、裏革ジージャンを見つける。汚れが多いわりに高い。「高い時期に仕入れちゃったんですよ」との弁。交渉不成立。代わりに目に付いていた淡い煉瓦色のデニムのイージーパンツを買う。家で穿ければいいと思い試着もしなかったのだが、帰って穿いてみるとこれがぴったり。長く穿き続けるだろう。ラベルにGRAMICCIとあるので検索してみたら、アウトドアの有名メイカーのようだ。
三軒目では仏軍のジャケット。新品同様なわりに安かった。さすが仏蘭西はフィールドジャケットさえ洒落ている。喉元を開けると背広衿になり、ネクタイも締められる拵え。僕は身長のわりに腕がやたらと長く、前述のリーヴァイスなど店員が「たはは」と笑うほど手首が出てしまうのだが、この仏軍ジャケットは袖が長くて助かった。こういうのは暑い時に涼しく寒い時に暖かいから重宝する。
冬支度。

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