今日は子どもの食研究会で、田町にある蓮昌寺保育園を訪問した。
以前、保健センターの栄養士である会員の一人が仕事で訪問した際に、とてもいい食育の取り組みをされているので、一度見学に行ってみてはという提案をしてくれたものがようやく実現した物だ。
参加者は平日の午前中ながら7名。市立保育園の保育士、私立保育園の栄養士、小学校の栄養士、アレルギー指導を行っている病院の栄養士、調理師養成専門学校のアシスタント、そして公民館職員2名というメンバーだ。
事務局(筆者)の段取りが遅れて、参加者の氏名を入れた依頼状が先週金曜日に着いたようで、それを見た園長先生がこんなにたくさん来るとは思っていなかったと公民館に電話をくれていたようだ。
幸か不幸か、その談話が入った際に職場にいなくて、こちらからもう一人参加者が増えても良いかという依頼の電話をかけた際に、園長先生からそのようなことを言われて、ちょっととまどったが、それは先方も同じだったのだろう。
保健所の視察では、栄養士1名しかこないから、2〜3名程度かと高をくくっていたようなのだ。それが6名、最終的には7名となったから、とまどわれたようだ。
もちろん、研究会としても初めての試みで、保育園側でもこういう食育の視察は初めてなのだと思う。初めて同士でどうしたものかというとまどいの中で見学は始まった。
終わって今考えてみると、園長先生の心配は大げさな人数にあったのだと思える。というのも、見聞きしてきた内容は筆者にはすばらしい物に思えたからだ。
さて、メンバーが園におじゃまして最初に飛び込んできたのは子ども達の全裸姿。水浴びでもしていたのだろう。身体を拭いているのだが、いきなりの姿にああ、保育園に来たんだと実感させられた。
園長先生に案内されて入った部屋の椅子のかわいいこと。「どうぞ、おかけください」とすすめられたのだが、あまりの小ささに一瞬どうしたものかと悩んでしまった。これも保育園ならでは。
実際に腰掛けてみると、とても小さいけれどしっかりした作り。これなら子どもがこの上にのって飛び跳ねてもこわれはしまいと思われた。本番というか、メインの食育の話に行き着く前に保育園自体に感心してしまう。
やはりいつもの自分の職場とぜんぜん違う場所に行くと刺激があるな。幼稚園には何度か入ったことがあるけれど、保育園はほとんどないからよけいに新鮮。椅子も確かに幼稚園のそれより小さいのだ。
さて、まだ給食が始まっていないからと、その小さな椅子に腰掛けて園長先生に参加メンバーがご挨拶し、お話を聞いていると、園の方が準備ができたと呼びにきてくださった。
最初は0歳児の部屋。予定にはなかったようだが、せっかくだから入ってみられますかと招き入れてくださった。
これはもう自分で食べている子もいるけど、保育士さんにスプーンで口に運んでもらっている子もいて、確かにこれは大変な仕事と思わせられる。
たくさんの見慣れない大人がちん入してきたものだから、わんわん泣き出した子もいて、そうそうに退散することとなった。僕はカメラマン(大きい園児にそう呼ばれたので)としてビデオカメラを回していたのだが、他の参加者はすぐに子どものそばに張り付いて声をかけたり、保育士さんに話を聞いたりしている。さすがだ。
次に通されたのはどうやら今日の見学のメインになる5歳児の部屋。
ここではすでに子ども達が配膳をすすめていた。といっても小学校の給食のように給食係がいて世話をするのではなく、一人ひとりの子どもが自分で茶碗にご飯をよそい、ポテトサラダも食べられるだけ取り、お汁も椀に入れて、自分のテーブルに持って行くのだ。
それだけでなく、テーブルの上には自分で書いた主菜や副菜などを色分けで置くようになっている配膳シート(これは汚れないようラミネート加工してある)の上に、置いていくのだ。
全員が置き終わったら、保育士の先生が、○○色の上には何を置いたかな?などと子ども達に尋ねている。すると子ども達は声をそろえて「ご飯!」とか「卵焼き!」なんていう調子で答えるのだ。うんうんなるほどという感じの食育だ。
子ども達の答えがすばらしいのに気をよくしたのか、保育士の先生はある子に「昨日の晩ご飯では○○色の食べ物は何を食べたかな?」と聞いたのだ。
これには尋ねられた子も「忘れたー!」と返事。これはさすがに無理だったみたい。でも食育への熱意というか、保育士さんの働きかけの様子はよく理解できた。
しばらくこの5歳児たちの部屋で、写真をとったりビデオを撮ったりしていたのだが、やはり参加したメンバーは子ども達にいろいろ声をかけている。これは後でレポート書いてもらわなくてはと痛感。
5歳児の部屋を出るときは、「まてきてねー」なんていう声をかけてくれる子もいて、思わず「良い子だねえ」と声が出てしまう。
毎日いてこれが仕事だと大変なのだろうが、短時間こうして訪問する分には、子ども達のおかげで、こちらがなんだか癒される感じがする。
さて、見学はその後2歳児3歳児4歳児と食事の様子を見せていただいた。中には肌の色の違う子もいるし、男性保育士もいて元気に働いている様子が感じられた。
子ども達にはちょっと気の毒だったなと思ったのは、その男性保育士さんが「みんな静かだな、いつものようにしゃべっていいんだよ」って言った時だ。やはり子ども達は緊張してしまっていたのだ。
スーツ姿で行かなかったのは正解だったろう。そんなきっちりした姿かたちのおとながぞろぞろ入ってくれば、泣きたくもなるというものだ。
それでもしばらく居ると慣れてきて、僕のことをカメラマンと呼び、何しにきたん?なんて聞いてくる子どもが出てくる。
ずいぶん長く食事の様子を見せていただき、ようやく最初の小さな椅子の部屋に戻り、やはりかわいい椅子に腰をかけて今度は園長先生と栄養士さんに加わってもらってお話をお聞きすることができた。
栄養士さんはちょっと年配で、この保育園の最年長かと見受けられたが、さすがにベテラン栄養士らしく、その話はなるほどと感じさせられることが多かった。
全部は書ききれないが、献立にも色々と工夫がされていて、子どもが餅を搗いたり、その餅にも色々なものを入れて興味を持って食べられるように工夫してあったりした。
その献立を親にも見せたり教えたりして、親も家で作ってみてずっと食べるようになったなんていう話も教えてくださった。こういうのがいいだよなあと感じさせられる。
単に話や情報を親に伝えるだけでなく、保育園で子どもがおいしく食べて、それを家でも伝えて作ってと言うから親が保育園から教えてもらって作る。すると根付いていくということだった。
経験から出てきたことなのだが、昨年の市民のつどいの分科会にお呼びしたノートルダム清心女子大(当時)林先生の食育の効果に関する研究結果とぴったり一致する話だった。
他にも月に一度は弁当を持ってくる日を作っている話。また、から弁当の日というのもあって、その日は園で食べるものは準備して、それを子ども達が選んで持ってきた弁当箱に詰めて食べるのだ。
その日がちょうど参観日に当たったこともあって、その時は親も弁当箱を持ってきて、子どもと同じように弁当に食べるものを詰めて一緒に食べたというのだ。
当然ながら、その人によってずいぶん弁当の内容が違ってくる。その違いに気づくことも親にとってはいい経験で、食育にもなっているということだった。
また、子ども達が家から持参する弁当の中でこれは良い弁当だというものは、写真をとって張り出したりもするという。
そういえば園の階段の横のスペースには、所狭しと食に関する園の取り組みの掲示がなされていて、参加者はなかなか階段を下りられないくらいだった。
色々なお話をお聞きしたのだが、最期には参加者が一人一言ずつ質問したり感想を言ったりして、この時間を締めくくって園を後にした。
僕は失礼したが、参加したメンバーのに多くは園と道を挟んで向かいにある「野菜食堂こやま」で昼食をとることにしていたので、そちらにいそいそ。
そうそう、園長先生が出がけに、そのこやまをさして、ここに自然食のいいお店があるんですよ、お昼にでもどうですかと紹介してくれだので、実は予約してあるんですと伝えたのだった。
すると、保育園でも小山さんに来てもらって親に食の話をしてもらったりしたことがあるのだと教えてくださった。それはそうだと納得。目と鼻の先だからね。

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