ある日、電話があった。
独立4年目ぐらいのある夏の暑い日だった。
陶ちゃん(違うけど)さんですか?
今、○○にいるんですけれど、お宅にお伺いしてもいいですか?
是非取引させて頂きたいんです。
いや〜いいですね・・・粉引き、炭化。
それはいいけど、そのお店で買ってない、ということだ。
つまり、取引内容にもよるけど、うちで何個か仕入れ値で買いたい・・・。
そういうことなのかな・・・?
その男は横文字の会社名を言った。
程なくして、憂鬱なるI町の工房に現れた。
少しナヨナヨした感じの業界っぽい社長だった。
彼は丁寧に取引内容を話し、在庫を仕入れて帰った。
それは企画会社だった。
例えば、酒屋さんの開店企画と同時に、陶器のギャラリーを作る。
そこに作品をコーディネイトまでする・・・そんな仕事だった。
ボクの酒器アイテムは無数にあり(当時はね・・・今は絞り込まれてきたと言うわけです)、その中の数点に発注が来る。つまりドンピシャの業者だった。
注文の数量もかなりあった。
最初はその会社が何処に取り次いでいるのかわからなかった。
不定期で注文が来るため、それに応えてはいたものの、中途半端だった。
仕事がやりにくかった。
それは、少しボクを苛立たせた。
ある日、FAXが来た。
こんな形の炭化ビアタンを造れないか?
そしていつもの定番発注書にこう書いてあった。
納品日をいついつにして欲しい。
すぐに連絡をくれ
と。
まだ何度も納品していない・・・付き合いが始まったばかりの業者なのに。
そんな思いが、不遜な陶ちゃん(違うけど)に火をつけた。
インカム付けたいロクロ師なのだから・・・。
電話した。
女性社員が出た。社長は不在だった。
納期指定してあるけど、どういうことよ!
おたくと何か契約書でも交わしたのかよ!
こんな発注書出すんなら、納品しないよ!こっちは忙しいんだよ
お宅のためだけに仕事してるんじゃないんだよ!
女性社員は謝って社長に伝える・・・そう言った。
事実、ボクはとっても忙しく、それでも納期を守る陶ちゃん(違うけど)!で通っていたのだ。
まだ信頼関係の構築されていない業者の言うことを何で聞かなければいけないのか?
その夜社長から電話があった。
続く

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