それは冬休みだった。
正月三が日ぐらいまで実家にいた。
そこの炭の堀コタツで「紅白・・・」を観ながら年を越した。
実家にはおじさんたちが帰って来て、いつもと違う賑わいがあった。
小学生後半になると、実家にそれほど長期でいた記憶がないので、小学三年の頃だったと思う。
実家の便所は離れにあった。
当時は母屋と牛舎が曲がり家のように隣接して、その先に便所の建屋があった。またその右側には、藁を保存しておく納屋があった。
その納屋は相当広い建物だった。
よくアメリカ映画で、天井の扉が開き、藁が落ちてくる・・・そんな仕組みだった。実際はそんなカコイイモノじゃないんだけれど・・・。
子供心には夜の便所は当然怖かった筈だが、どうしていたのか?
兄弟で行ったのか?
おじさんについてきてもらったのか?
牛舎では、夜まで搾乳していたので、その灯かりが便所の方まで洩れ、人の気配と牛の鳴き声で恐怖はなかったのかもしれない。
しかしそれも夜の8時ごろまでではなかったか?
深夜は外に出なかったのだろう。
従姉妹がいた。4つ下位だった。
幼稚園生と小3ぐらいのボクが遊べるはずがない。
しかし、この冬は違った。
みんなコタツでテレビを観ている。兄貴は小5か6だから、おばさんたちと中尾ミエだのの歌謡番組を観ていた。
退屈したボクはひとりで庭に出た。
従姉妹と近所の男友達が遊んでいたからだ。
陶ちゃん(違うけど)遊んでよ〜!
従姉妹が言った。
かくれんぼしようか・・・?
男友達のMは従姉妹のZと顔を見合わせて頷いた。
Mは少し大人のボクを不安げに見上げた。
午後の三時ごろだったか?
まだ明るかったが、冬の夕日が山に沈み始め、次第に夕暮れの闇が近づきはじめていた。
続く。

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